山口県職業能力開発協会は「職業能力開発促進法」に基づき、国や県と連携をとりながら従業員の能力開発、向上のための事業を行う団体として設立されています

トピックス3

お役立ちコラムNEW

「日本の技能」 今と、これから

「日本の技能」 今と、これから

待ったなしの危機

 少子・高齢化の進行や若者の技能離れなどの課題が表面化するようになって以来、技能の振興、継承の重要性が叫ばれ続け、これまで様々な対策や取組がなされてきましたが、関係者の努力にもかかわらず、その深刻さは増す一方で、これ以上先送りできない待ったなしの危機的状態にあります。

何とかしたい、しなければ!

 効果的な対策を具体的に実行していくことが何よりも重要ですが、その前に、その具体的な行動内容の目的や理念をしっかりと認識をしておくことも大変重要と考えています。目的や理念が曖昧になったり、行動そのものが目的化してマンネリ化したりすると、十分な効果が得られなくなりがちです。
 そこで、技能振興や技能継承、技能人材育成にまつわる現状と今後の展望などについて、関係各位にあらためて原点を御認識いただき、意を新たにしていただければとの思いで、コラム形式で、適宜、情報を発信してまいりたいと考えています。
 ご感想やご意見等ございましたら、私の方へお届けいただけると幸いです。

                       山口県職業能力開発協会 専務理事  松岡 光信
                      (山口県技能士会連合会  常務理事)
 

バックナンバー目次

平成30年7月 お役立ちコラム②

  ものづくり大国日本を築くために。「技能の見える化」とは?

平成30年7月 お役立ちコラム①

  技能振興は、なぜ必要なの? 技能士は、縁の下の力持ち?
 

平成30年7月 お役立ちコラム②NEW

ものづくり大国日本を築くために。
  「技能の見える化」とは?


 今回ご紹介する内容は、全国技能士会連合会としての意見が反映されているものですが、この中には、現状認識や将来展望など、多くのヒントが含まれていますので、是非、参考にしていただければと思います
 ※特に重要と思われる部分には、アンダーラインを付しています。
 
(全国技能士会連合会ホームページから転載)


 
  •  平成29年6月1日、自由民主党政務調査会は「日本版マイスター制度に関する特命委員会第二次提言」を取りまとめ、同党ホームページで公表をしました。
  •  この提言は、大関東支夫全国技能士会連合会・全技連マイスター会会長及び飯島勇日本内装仕上技能士会連合会会長・全技連マイスター会理事そのほか職人団体、産業界の識者からの12回以上にわたるヒアリングを重ね取りまとめられたものです。特に、技能士の現状や現場実態を踏まえた大関全技連マイスター会会長・飯島同会理事の意見が、提言各項目に多く反映されております
  •  この提言は、これからのマイスター制度の充実発展を期すうえで、重要な指標となりうるものであり、その内容の多くが日本政府の政策として早期に実現されることを、強く望むものでございます。
    会員の皆様にも、ぜひ提言内容を熟読されることをお願いいたします
                    「日本版マイスター制度に関する特命委員会第二次提言」
 平成29年6月1日 自由民主党政務調査会
 
(抜粋、要約及びアンダーラインは、当方にて行ったものです)
 
 当特命委員会では、職人の社会的、経済的、地位の向上を目指し、ドイツのマイスター制度も参考にしながら、職人団体をはじめ産業界からのヒアリングを重ねてきた。全国で372万人いると言われている職人が日本の経済活動の重要な担い手であることを再認識光を当てていくことが重要である。
デフレから脱却し、地方でもアベノミクスの成果を実感できるようにする、という大きな目標においても、過度に安さを追求する社会から、職人等による高付加価値の製品・サービスを供給する社会への展開が必要である。
第四次産業革命、AIの時代にあっても継承されるべき技(能)があり、ロボットにとって代わることのできない人の手仕事を維持していかねばならない。そのためにも親方から弟子へ日本型の産業の礎も継承されていく必要がある。匠の技を大事にする、本来の、ものづくり大国日本を築くべく、日本版のマイスター制度を確立することを目標とする。そのために求められる施策を以下提言する。

Ⅰ.人材育成 

  1.  技能検定に関して、制度本来の価値を取り戻すためにも、しっかりと選択と集中を行い、必要な公費負担を確保していくことが重要
    また、真に必要と認められる職種について都道府県が実施する形式も含め、公費負担を行える形式での実施を可能とすることを検討すべき。
     若年層が技能検定を受検しやすい環境を整備し、各都道府県におけるものづくり分野を支える必要な人材の確保、育成を支援するため、受検料の減免を行う都道府県等に対し、国の支援を講じる制度がスタートした事を広く周知すべき
  2.  民間発意の職人育成塾の設立等(内装系の職人育成塾(香川)や板金、瓦等の利根沼田テクノアカデミー(群馬)等)、国交省・厚労省・建設業振興基金等も関わり、研修プログラムの作成や広報での支援が行われているが、依然として地方における人材の確保が課題である。被災地の復旧、復興にも影響が出てくる状況にある。人材開発支援助成金では職業訓練等を実施する事業主体に対して訓練経費や訓練中の賃金を助成すること等により、企業内の人材育成を支援している。OFF-JT、OJT両方への助成があるので、見習いを雇い入れる親方がこの助成金を活用し人材育成を進めやすくできるよう、周知徹底を求める。
  3.  ものづくりマイスター制度が、熟練技能者による実技指導を通じた若年者への技能継承等を目的とすることに鑑み、ものづくりマイスターの高齢化への対応を進める等、世代が途切れることのないよう体制の強化が求められる。
  4.  文化庁所管の選定保存技術は69の技術が選定されており、個人54名と34団体(2017年5月17日現在)が保持している。後継者を育成中であっても、最後の一人となっている保持者もおり、その技術が途絶えることのないよう、必要な予算の確保、広報、民間との連携を進めることが必至。
  5.  歴史的建造物の修繕、改修等は長期にわたる技能の伝承、継承が必要であり、その環境を整えることが必要
  6.  例えばものつくり大学は技能工芸学部の下に製造学科と建設学科があり、実習とインターンシップを通じて、仕事をする意味や職場での考え方、コミュニケーションの必要性等を体得することを目指しているが、このようなものづくり分野における卒業生の活躍の場を増やすことで、各大学における人材育成に更に力を入れていく。
    また、京都伝統工芸大学校等の専修学校等で見られるように、放送大学との連携協力を通じた学士号取得の事例等を増やしていくことも今後の課題。 

Ⅱ.技能の見える化

  1.   優れた技能者の見える化に向けて、「建設キャリアアップシステム」の構築が進められている。現在、システムの運営主体となる(一財)建設業振興基金においてシステムの発注手続きを進めているところであるが、技能者がこれまでの経験や技能を蓄積、活用することで、現場管理の効率化を図るとともに、技能者の処遇改善となるように確実に進められたい。 20194月からの本運用に向け、準備が進められている。
  2.  技能検定の認知度は事業所で49.3%であり、技能検定制度・技能士のロゴマークの普及、認知も充分とは言えないため、技能士が付けられる技能士章も含め一層の周知に取り組むべきである。また、今後、一級技能士が関与した製品、サービス等について、付加価値の高いものであることが分かるよう、認定マーク(グッドスキルマーク)を普及する等、技能が広く理解される社会となる様、啓発活動を進めるべきである。
     「グッドスキルマーク」の運用が2017年度から開始されている。
  3.  225にわたる伝統的工芸品について、「伝統マーク」の認知度は、25%程度である。その付加価値が広く理解される社会となるよう、啓発活動を進めるべきである。伝統工芸士は現在約4100人にのぼるが、今後海外への発信を含め、日本の伝統的工芸品の普及活動を更に強化していくべきである。

Ⅲ.経済的価値、処遇改善 

  1.  技能検定の合格と処遇が必ずしも連動していない。国の営繕工事においては1級技能士を置くこととしているが、1級技能士を常駐させることを義務付ける制度は一部地方公共団体での採用に留まっている。33業種にわたる登録基幹技能者や全技連マイスターの位置づけ等、既存制度との整理を進めつつ、技能があることが処遇の改善となることや企業の収益向上につながるよう検討すべきである。
  2.  下請け構造を点検し、職人の給与向上につながるよう、技能士の賃金水準アップを目指す

 Ⅳ.社会の理解、連携 

  1.  技能を持つ人が社会に適正に評価されるよう、ドイツのように、マイスターには高くても良い仕事をしてもらいたい、という風土を醸成させていく。
  2.  商工会議所、商工会等、異なる技能を持っている人々が情報交換をする場、コラボレーションのきっかけ作りに職人等技能者がより積極的に参画できるよう環境整備を求める。技のみならず、マーケットインやブランディングといった総合力をつけることができるよう、中小企業大学校、よろず支援拠点を含めて、『職人の「稼ぐ力」の確立応援パッケージ~WAZAカンパニーへの支援策~』(経済産業省)の拡充と、対象者へのアプローチの強化を徹底する。
  3.  技能士の地方組織等が解体の危機にある事等を踏まえ、全国技能士会連合会や中小企業関係団体等を通じて、職種ごとの職能団体や業種団体等と国とが、さらなる支援策について協議を行う。
  4.  2023年技能五輪国際大会の日本への誘致を目指している愛知県への支援をすることで、技能尊重の機運を高める。
    <参考>
【日本再興戦略2016(抄)平成28年6月2日「生産性の高いものづくり分野の人材育成のため、若者の技能検定の受検料の減免を速やかに検討し本年内に結論を得るとともに、技能五輪国際大会の日本への誘に向けた具体的な方策を検討し来年度年央までに結論を得る。」】
 ※若者の技能検定受験料減免:H29年度後期検定から実施

Ⅴ.「日本マイスター(仮称)」制度の確立に向けて 

  1.  「日本マイスター」の認定に向けて立法化を目指す。「日本マイスター」認定の対象は、技能検定126職種のみならず、他の国家資格等も考えられる。全技連マイスター、理容BBシェービングマイスター等、各々の業界での取り組みも参考にする。ものづくりマイスター、各県のマイスター等、既存のマイスターの名称や資格等は堅持しつつ、新たにシームレスな「日本マイスター」の認証を考える
  2.  「日本マイスター」の認証の仕組みを決める。ミシュランの3つ星のように、「見える化できる制度」にすることで、海外での展開や、インバウンド向けのサービス展開への道を広げる。技能にプラスして日本マイスターが持つべき能力を検討し、認定の基準を設定する。その際、各業界で独自のマーケティングの手法がある事等も考慮する。一方で、団体からの推薦により自動的に認定することは避けるべきである。
  3.  「日本マイスター」の認定の効果について検討する。また、セキュリティ人材分野など、これからの成長分野も対象としていく。
 

平成30年7月 お役立ちコラム①NEW

技能振興は、なぜ必要なの?
  技能士は、縁の下の力持ち?


 技能は個人に属しますが、多くの場合、経済活動(企業組織)の中で、その役割を果たし、力を発揮します。経済活動を発展させるためには、個人と組織の双方が技能の向上・活用を進めていくことが大切です。
 そこで、この技能の位置付けを、企業の「経営戦略上の技能士の位置付け」と、「個人にとっての技能検定の位置付け」という二つの視点で分析された報告書の内容を御紹介します。(原文を要約し、ポイントにはアンダーラインを付しています。)

 

◆経営戦略上の技能士の位置付け◆

 (1) 熟練技能者の作り出す付加価値 
  •  製造業を中心とした優れた技能を土台とした産業が、戦後の日本の発展を支えてきたことは多言を待たない。
  •  日本の製造業がその強さを誇ってきた大きな要因として、「裾野を支える技術・人材の質の高さ」をあげることができる。具体的には、①高度なコア技術を持つ中小企業の存在、及び②PDCAサイクルへの製造現場の積極的な参加とそれを支える「考える」現場社員の存在であり、諸外国と比較しても、これらの裾野の優位性が極めて高い
  •  現場の「考える社員」の核となり日本の製造業を支えてきたのが、技能労働者、とりわけその頂上に位置する熟練技能者である。熟練技能者は、顧客にとっての付加価値を直接創り出すだけでなく、企業を土台から支えることにより、間接的に顧客にとっての付加価値を創り出すことにも貢献している。 
(2) 付加価値創造の源泉
  •  高度な技能を用いて製品やサービスの品質を最高レベルまで高めたことにより生み出される付加価値の高い製品や品質力は、いたずらに価格競争に巻き込まれることがない適正な価格設定や、製品やサービス、又は企業そのもののブランドイメージや広告効果、顧客満足度の向上へとつながっていく。この「製品の品質の高さ」は、顧客の目に見えやすいという点から、「表の競争力」と呼ぶことができる。
  •  「裏の競争力」として、一つ目は、開発・調達・生産・販売・サービスという一連の製品やサービスを創り出すためのプロセスの効果性・効率性を高める「業務プロセス力」である。二つ目は、業務プロセス力を下支えしている従業員の持つ価値観の共有やメンバー間の関係性の構築、個々の従業員のコミュニケーション力などの「組織能力」である。多くの企業においては、顧客が求める水準に到達するために高度な技能を持つ技能者がどのように自らの技能を発揮し、相互に結びつけるのかという共通の価値観・ベクトルの形成や、教え合いによりお互いに技能を高め続ける関係の構築などが実現されている。 
(3) 付加価値創造の源泉をサポートする技能検定 
表の競争力:「製品・品質力」向上に対する技能検定の意義・効果
 
 製品やサービスを作り出し提供する「技能者」のレベルの高さをもって、製品やサービスの品質の高さを顧客に示すための客観的評価尺度として、技能検定は広く活用されている。技能検定に合格した技能士がいることにより、企業としての信頼性が向上し、受注に好影響があるなどの声を多く聞く。
 
裏の競争力向上に対する技能検定の意義・効果
 
  ① 業務プロセス力向上に対する意義・効果
 技能検定は、当該職種において求められる技能と知識を網羅的に包含しているため、製品の完成やサービスの完了に至る一連の連続的な工程において求められる技能を身につけなければ合格することはできない。通常の業務では工程の一部のみを担っている場合でも、工程全体を理解することにより、一連の工程の生産性を高めることを考えることができるようになる。
また、多くの技能者が技能検定に挑戦することにより、業務プロセスを担う一人一人の技能者の技能レベルが向上し、結果的に作り出される製品やサービスの質が向上する。企業においても、たくさんの技能が掛け合わさって最終的な製品なりサービスに結実させるには、その一つ一つの技能が向上することが重要であるとの声が聞かれた。
さらに、技能検定では一つ一つの技能の「原理原則」を身に着けることができ、業務プロセスにおいて問題が生じた場合などに原理原則に立ち返って「なぜ」を繰り返し、現場で問題解決を図ることができる。また、原理原則は根底を流れる原理原則を意味しており、例えば製造業の場合は製造現場だけでなく、設計部門等の他のプロセスとの対話を促進することにもつながる。
 
  ②  組織能力向上に対する意義・効果
 「優良」と呼ばれる企業では、基本的な原理原則を押さえた上で、それを土台として独特のノウハウやカタを築き上げ、オリジナリティを追求している。技能検定は、土台としての基本を押さえることに貢献している。た企業からは、オリジナリティを発揮したいからこそ基本をしっかり押さえることを重視し、その手段として技能検定を位置付けているという声が聞かれた。
また、技能検定で身につけた知識、技能が共通言語となり、相互の意思疎通を円滑化させる効果もある。さらに、熟練技能者や先輩社員から技能検定受検を控えた社員に対して実地での訓練により技能の伝承を図るなど、社内で教え合う関係が構築されている場合は、教える側が原理原則を理解しているため、教え方も的確なものになるという効果もある。 
 
(4) スパイラルアップしながら進化する競争力
 「裏の競争力が土台となって表の競争力が高まる」という関係はそう単純ではな
いが、目に見えない裏の競争力が転化して目に見える表の競争力を向上させると、企業内では、再生可能な「目に見えるもの」を社内で共有した上で次の段階へと進むことができる。その一連の流れが再生可能な経験値として社内に定着すれば、社内で一度経験した目に見えるものの上に、また新たな目に見えない競争力を積み上げるという好循環が生まれることになる。
 

◆個人にとっての技能検定の位置付け◆ 

  •  企業においては技能検定が企業の経営力を伸ばすという指摘が多くなされている。
  •  検定合格により、従業員の一人一人のスキルが向上することにとどまらず、例えば経理や顧客対応などの現場以外の部署の担当者が現場の知識を身につけることで、業務の効率化を図れ、という効果も現れている。また、社員同士が技能検定の対策講座を開いたり、先輩が後輩に検定の要点をアドバイスしたりすることで、従業員間のコミュニケーションの量が増加し、社内の雰囲気が良くなったり、お互いに教え合うことを率先して行うような互助の企業風土が醸成されたりといったメリットも指摘されている。
  •  技能検定に合格したという事実が、製品の価格の押し上げや顧客の増加に直結することはないが、製品の品質や顧客満足の向上により、間接的にそれにつながる可能性が増すことは間違いない。
  •  また、当然のことながら、技能検定の受検はそれに挑戦する技能者や学生自身にとってメリットがあるものでもある。 

技能検定を受けることの意味

 (1) 技能士としてのアイデンティティの確立 

  •  技能者が有する技能は、製品やサービスという形で発揮されるまでは人の目に見えない存在である。しかし、技能者が技能検定に合格し、技能士となることで、その人が一定水準のスキルを有することを可視化することができる。自分の技能の高さが技能士という目に見える形で名刺に印字されたり、企業内で表彰されたりすることで、自分の技能士としての自覚につながったという意見は、多く聴くことができた。 
  •  アメリカ合衆国の心理学者の「マズローの5段階欲求」によれば、人間の欲求のうち、自我の欲求や自己実現の欲求は人間が持つ欲求の中でも最も高次なものとされている。その意味で、自分の腕の高さの証明となり、それが周囲から評価されたり賞賛されたりするきっかけともなる技能検定という制度は、技能士の自己実現欲求を満たすための有用な手段であるということができる。
  •   技能者が自分の腕を磨いていく上で、長所を伸ばし、短所を克服していくためには、他者との比較により自分の実力を把握することも重要である。自分と同じ技能を持っている人々の仕事ぶりを目の当たりにすることで、自分には無かった技能について知ることができるのも検定試験ならではのことである。技能五輪等への出場を通して、同年代の様々な職種の技能士との交流を深められることも、技能の広がりや飛躍につながるいい機会であると捉えることもできる。また、普段は他の企業等の技能・技術を見ることが少ないため、競技会や技能検定会場で情報交換することで、様々な刺激を受けることができる。
 (2) 技能の原理原則の理解 
  •  技能検定試験では、職種によっては現場で用いられていないような手作業が出題されたり、現場では当たり前の事象として片付けられてしまうような基本的な事柄が出題されたりすることもある。このような、技能者たちが現場で作業をしていく上で、一見重要ではないと思われがちな基礎的な知識や技能、原理原則の重要性は、多くの技能士たちが指摘している。
  •  技能検定に合格するまでの過程で習得した原理原則としての知識や技能は、現場の職人や顧客とのコミュニケーションをとる際に役に立つ。また、間接部門の職員にも技能検定の受検を推奨することにより、多くの企業でコミュニケーションツールとして、技能検定が評価されている。
  •  技能士が仕事をする現場は、様々な専門知識や用語が飛び交う場所である。技能検定に向けた勉強は、そのような知識や言葉を習得する機会と見ることもできる。 
  •  現場で身体感覚として身についていたような事柄も、その科学的な因果関係などを理解することによって、より実践的な改善提案につなげることが可能となる。
    例えば、温度や湿度が塗装のでき上がりに与える影響について理解できたので、バンパー塗装の仕上がり時に起こる問題について「なぜ起こったのか」を考えられるようになったとか、ホテルサービスの原理原則を理解した技能士が改善活動を行うことで成果を上げているとか、また、機械保全や金属熱処理の原理原則を理解した技能士たちが新しい冶具を製作することによって生産効率を向上させているといった事例が多く聞かれる。
     このように、基礎的な知識を持っていることで、起こっている事柄を分析し、改善するための視点を得られるというメリットも検定受検にはある。
 (3) 技能の高度化・深化 
  •  多くの技能士から、「技には終わりがない」、「仕事をすればするほど自分がまだまだだと気づく」という言葉を耳にした。そこには技能士の謙遜の気持ちも多分に含まれているのかもしれない。しかし、自分の技能のレベルが上がり、自分の仕事に習熟していくほどに、より高度な業務を手がけられるようになったり、現場の状況に応じた対応を出せるようになるという。その気持ちゆえに、多くの技能士は自分の腕を向上させていくことにひたむきである。したがって、1級や特級といった高位の技能士であっても一回一回の仕事に全力で向き合い、その経験から学び取る姿勢を失わない。ある著名な技能士も、「究極の目標は人間国宝であり、そのためには日々鍛錬である。」と語り、これまでにかなり難度が高く歴史的にも残る作品を手掛けてきても、このような謙虚な姿を失っていない。 
  •  技能検定は、そうした向上心のある技能士にとっては、これまでの経緯を確認するための道標(みちしるべ)であると同時に、将来より高度な技能へと挑戦するための指針の役割も担っていると言える。
     このように、技能検定という制度は、技能士を抱える企業にとってだけでなく、技能士本人が自らの立ち位置を確認し、技能の原点を把握して、より高度な水準にまで高めていくことに寄与していると言える。
  
             <出典・引用>     
             「匠たちからのメッセージ」 ~匠社員が育ち・活躍する職場づくり~
               2010年3月 ㈱野村総合研究所
                ※平成21年度 厚生労働省委託事業  ものづくり立国の推進事業